ピアノコードボイシングの基本


ピアノ演奏でのコードボイシングは、ジャンルや演奏シチュエーションによって大きく異なります。今回は、ジャズとポップス、さらにピアノソロとバンド演奏での違いを踏まえたコードボイシングの選び方を解説します。

コードボイシングとは?

ピアノ

コードボイシングとは、同じコードでもどの音をどのように配置して弾くかを工夫することです。適切なボイシングを選ぶことで、演奏の雰囲気やサウンドに大きな影響を与えます。

ジャンルごとのボイシングの違い

バンド

ジャズにおけるコードボイシング

ジャズでは、複雑なハーモニーやテンションが重要な要素です。以下のようなボイシングが一般的です。

ルートレス・ボイシング

ルートレスボイシング

ジャズではベースがルートを担当することが多いため、ピアノの左手ではルートを省略し、3度と7度を中心にボイシングを行います。これにより、左手に余裕ができ、他の指でテンション(9th、11th、13thなど)を含む拡張和音を演奏できます。特にバンド演奏ではベースがルート音を担当するため、ルートレス・ボイシングが好まれます。ソロピアノでも、洗練された響きを得るためにこのボイシングが使われます

例:C7コード

  • 左手: E(3度)、Bb(7度)
  • 右手: G(5度)、D(9度)、A(13度)
C7ルートレスボイシング
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最初にC7コードをフルボイシング、そのあとでルートレスボイシングをピアノを弾いてます


ただし、こちらの土田晴信氏ベースがいてもルートを弾いてもよい、とされてます。

ビバップ セロニアスモンク、バドパウエル はルートを抑える

————-これより以降 ビルエバンス ルートを外す ——–という歴史

ルート+7th ルート+3rd

ベースがいてもルートを押さえて良い

シェル・ボイシング

ピアノシェルボイシングG7

シェル・ボイシングは、ジャズの基本的なボイシングです。初期のビバップスタイルや、簡潔でダイナミックな響きを得たい場合に使われます。左手で3度と7度だけを押さえるシンプルなボイシングです。右手でテンション音を加え、リッチなハーモニーを作り出します。

例:G7コード

  • 左手: B(3度)、F(7度)
  • 右手: A(9度)、E(13度)

最初にG7コードをフルボイシング、そのあとでシェルボイシングをピアノを弾いてます

ポップスにおけるコードボイシング

ポップスでは、シンプルで安定感のあるサウンドが求められます。次のようなボイシングが一般的です。

フルボイシング

ポップスでは、ルート、3度、5度で構成されるフルボイシングが基本です。これにより、安定した響きを作り出します。

例:Cコード

  • 左手: C(ルート)、G(5度)
  • 右手: E(3度)

パワーコード

ルートと5度だけで構成されるシンプルで力強いコード。ポップスやロックでよく使用されます。

例:Gコード

  • 左手: G(ルート)、D(5度)
  • 右手: メロディまたは同じ音を重ねる

ピアノソロとバンド演奏でのボイシングの違い

ピアノソロ

ピアノソロのボイシング

ピアノソロでは、ピアニストが全ての音域をカバーする必要があります。そのため、以下のようなボイシングが使われます。

オープン・ボイシング

オープンボイシング
クリックすると拡大します

和音の音を広げて配置し、豊かで広がりのあるサウンドを作り出します。低音域でベースラインを担当しながら、高音域でメロディやコードを弾くことが多いです。

例:Cコード

  • 左手: C(ルート)、G(5度)
  • 右手: E(3度)、G(5度)、C(オクターブ上のルート)

クローズ・ボイシング

和音を密集させ、コンパクトなサウンドを作り出します。これにより、特に中高音域で和音の一体感が強まります。

例:Cコード

  • 左手: C(ルート)、E(3度)
  • 右手: G(5度)、C(オクターブ上のルート)

バンド演奏でのボイシング

バンド

バンド演奏では、他の楽器とのバランスを考慮する必要があるため、ピアノのボイシングも変わります。

ルートレス・ボイシング(ジャズの場合)

クリックすると拡大します

ベースがルートを担当するため、ピアニストは3度と7度に集中します。これにより、サウンドがクリアになり、バンド全体がまとまりやすくなります。

例:C7コード

  • 左手: E(3度)、Bb(7度)
  • 右手: D(9度)、A(13度)

シンプルなフルボイシング(ポップスの場合)

バンドの他の楽器(特にベースとギター)が低音域をカバーしているため、ピアノは中高音域で和音を補強します。シンプルにルート、3度、5度を押さえることが多いです。

例:Fコード

  • 左手: F(ルート)
  • 右手: A(3度)、C(5度)

まとめ

鍵盤

ピアノ演奏において、コードボイシングの選択はサウンドの質を大きく左右します。ジャズではテンションや複雑な和音を駆使し、ポップスではシンプルで安定した和音が求められます。また、ピアノソロとバンド演奏では、ボイシングの方法も異なります。状況に応じてこれらのボイシングを使い分けることで、よりプロフェッショナルな演奏が可能になります。

ぜひ、今回紹介したボイシングを練習して、演奏の幅を広げてください。自分のスタイルに合ったボイシングを見つけることで、ピアノ演奏が一層楽しくなることでしょう。

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