ピアノ演奏でのコードボイシングは、ジャンルや演奏シチュエーションによって大きく異なります。今回は、ジャズとポップス、さらにピアノソロとバンド演奏での違いを踏まえたコードボイシングの選び方を解説します。
- 基本コードでの鍵盤の押さえ方は理解できるが、バリエーションが欲しい方
- コードボイシングについて基本形を知りたい方
- ピアノでのコードボイシングがわかり演奏や作曲に広がりが出てきます。
コードボイシングとは?
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コードボイシングとは、同じコードでもどの音をどのように配置して弾くかを工夫することです。適切なボイシングを選ぶことで、演奏の雰囲気やサウンドに大きな影響を与えます。
ジャンルごとのボイシングの違い
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ジャズピアノにおけるコードボイシング
ジャズでは、複雑なハーモニーやテンションが重要な要素です。以下のようなボイシングが一般的です。
ルートレス・ボイシング
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ジャズではベースがルートを担当することが多いため、ピアノの左手ではルートを省略し、3度と7度を中心にボイシングを行います。これにより、左手に余裕ができ、他の指でテンション(9th、11th、13thなど)を含む拡張和音を演奏できます。特にバンド演奏ではベースがルート音を担当するため、ルートレス・ボイシングが好まれます。ソロピアノでも、洗練された響きを得るためにこのボイシングが使われます
例:C7コードのルートレス・ボイシング
- 左手: E(3度)、Bb(7度)
- 右手: G(5度)、D(9度)、A(13度)
ただし、こちらの土田晴信氏はベースがいてもルートを弾いてもよい、とされてます。
ビバップ セロニアスモンク、バドパウエル はルートを抑える
————-これより以降 ビルエバンス ルートを外す ——–という歴史
ルート+7th ルート+3rd
ベースがいてもピアノはルートを押さえて良い
引用元 https://youtu.be/nvyRA-GuTMk
シェル・ボイシング
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シェル・ボイシングは、ジャズの基本的なボイシングです。初期のビバップスタイルや、簡潔でダイナミックな響きを得たい場合に使われます。左手で3度と7度だけを押さえるシンプルなボイシングです。右手でテンション音を加え、リッチなハーモニーを作り出します。
例:G7コードのシェル・ボイシング
- 左手: B(3度)、F(7度)
- 右手: A(9度)、E(13度) ※5度は省略
ポップスピアノにおけるコードボイシング
ポップスでは、シンプルで安定感のあるサウンドが求められます。次のようなボイシングが一般的です。
フルボイシング
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ポップスでは、ルート、3度、5度で構成されるフルボイシングが基本です。これにより、安定した響きを作り出します。
例:Cコードのフルボイシング
- 左手: C(ルート)、G(5度)
- 右手: E(3度)
パワーコード
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ルートと5度だけで構成されるシンプルで力強いコード。ポップスやロックでよく使用されます。
例:Gコードのパワーコード
- 左手: G(ルート)、D(5度)
- 右手: メロディまたは同じ音を重ねる
ピアノソロとバンド演奏でのボイシングの違い
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ピアノソロのボイシング
ピアノソロでは、ピアニストが全ての音域をカバーする必要があります。そのため、以下のようなボイシングが使われます。
オープン・ボイシング
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和音の音を広げて配置し、豊かで広がりのあるサウンドを作り出します。低音域でベースラインを担当しながら、高音域でメロディやコードを弾くことが多いです。
例:Cコードのオープン・ボイシング
- 左手: C(ルート)、G(5度)
- 右手: E(3度)、G(5度)、C(オクターブ上のルート)
クローズド・ボイシング
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和音を密集させ、コンパクトなサウンドを作り出します。これにより、特に中高音域で和音の一体感が強まります。
例:Cコードのクローズド・ボイシング
- 左手: C(ルート)、E(3度)
- 右手: G(5度)、C(オクターブ上のルート)
バンド演奏でのボイシング
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バンド演奏では、他の楽器とのバランスを考慮する必要があるため、ピアノのボイシングも変わります。
ルートレス・ボイシング(ジャズピアノの場合)
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ベースがルートを担当するため、ピアニストは3度と7度に集中します。これにより、サウンドがクリアになり、バンド全体がまとまりやすくなります。
例:C7コードのルートレス・ボイシング
- 左手: E(3度)、Bb(7度)
- 右手: D(9度)、A(13度) ※5度は省略
シンプルなフルボイシング(ポップスピアノの場合)
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バンドの他の楽器(特にベースとギター)が低音域をカバーしているため、ピアノは中高音域で和音を補強します。シンプルにルート、3度、5度を押さえることが多いです。
例:Fコードのフルボイシング
- 左手: F(ルート)
- 右手: A(3度)、C(5度)
まとめ
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ピアノ演奏において、コードボイシングの選択はサウンドの質を大きく左右します。ルート音を強調する5thはジャズやファンクは省略し、ポップスは使用します。ポップスでは、コードの基本構成音であるルート(根音)、3度、5度を含むボイシングが一般的です。これにより、明確で安定した和音が得られます。一方、ジャズではボイシングの際に5度を省略することが多くあります。これは、3度と7度(ガイドトーン)を強調することで、コードの機能や進行を明確にし、より複雑で豊かな響きを生み出すためです。また、5度を省略することで、テンションノート(9度、11度、13度など)を加えやすくなり、独特のジャズらしいサウンドを作り出すことが可能となります
また、ピアノソロとバンド演奏では、ボイシングの方法も異なります。状況に応じてこれらのボイシングを使い分けることで、よりプロフェッショナルな演奏が可能になります。
ぜひ、今回紹介したボイシングを練習して、演奏の幅を広げてください。自分のスタイルに合ったボイシングを見つけることで、ピアノ演奏が一層楽しくなることでしょう。
よろしければ引き続きこちらをお読みいただくと、知識が深まります。
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