DAWで打ち込みをやると機械的な音になりがちです。その味を生かしたテクノミュージックなら問題なさそうですが、できれば人が生演奏しているようにデータを修正したいですよね。
DAWで作ったとは言え、楽曲に人間が生演奏をしている感じを出したいですよね。
楽器に人間味を与える、いわゆるヒューマナイズする要素として、以下の点が挙げられます。
1. タイミングの微妙な揺らぎ:演奏時のリズムやテンポにおけるわずかなズレは、機械的な正確さよりも人間らしい表現を生み出します。
2. ダイナミクスの変化:音の強弱やアクセントの付け方を変化させることで、感情豊かな演奏が可能となります。
3. 音色の多様性:楽器や声の音色の変化やニュアンスは、演奏に深みと個性を加えます。
4. 表現技法の活用:ビブラートやポルタメントなどの技法を用いることで、より感情的な表現が可能です。
これらの要素を組み合わせることで、音楽に人間らしい温かみや感情が楽曲に宿ります。
Cubaseではいくつかのテクニックを活用してヒューマナイズすることができます。デジタル特有の機械的な響きが減り、よりリアルな演奏を実現できます。そのテクニックをまとめました。
実例はCubase Pro 13 (Windows)です。
Cubaseタイミングのランダム化
人間の演奏では、完璧なタイミングではなく、少しずれたリズムが普通です。Cubaseにはヒューマナイズする機能があり、MIDIノートのタイミングを微妙にずらすことで、揺らぎを持たせられます。
作成したMIDIノートを自動でタイミングをランダマイズする方法1
クオンタイズパネルを使用します。
- 手順1MIDIノートを選択
ランダマイズしたいMIDIノートを選択します。
- 手順2クオンタイズパネルを開く
メニューから「編集」→「クオンタイズパネル」を選択します。
または
上部の「クオンタイズパネルを開く」ボタンを押します。
- 手順3ランダム化の設定
クオンタイズパネル内の「ラフクオンタイズ」に、ティック(tick)の値を設定します。この値が大きいほど、ノートのタイミングが大きくランダムに変化します。4分音符は480ティックに相当しますので、10以下、5〜6ティック程度の設定が自然な変化をもたらします。
- 手順4適用
設定後、「クオンタイズ」ボタンをクリックしてランダマイズを実行します。
作成したMIDIノートに自動でタイミングをランダマイズする方法2
ロジカルエディターを使用します
ロジカルエディターとは
Cubase Proに搭載されている強力なツールで、特定の条件に基づいてMIDIデータやイベントを検索し、それらに対して一括で操作を行うことができます。例えば、特定のベロシティを持つノートを選択して削除したり、ノートの長さを一括で変更したりすることが可能です。この機能を活用することで、作業効率を大幅に向上させることができます。
- 手順1MIDIノートの選択
タイミングをランダマイズしたいMIDIノートを選択します。
- 手順2ロジカルエディターを開く
メニューから「MIDI」→「ロジカルエディター」→「設定」を選択します。
- 手順3設定の入力
ロジカルエディター内で以下の設定を行います。
イベントターゲットフィルター: 「タイプ」→「等しい」→「ノート」
イベント変換アクション: 「ポジション」→「次の範囲でランダム値を設定」
パラメーター1と2: 「ティック」の最小値と最大値を設定します。4分音符は480ティックに相当しますので、10以下、5〜6ティック程度の設定が自然な変化をもたらします。
- 手順4適用
設定後、「適用」ボタンをクリックしてランダマイズを実行します。
Cubaseのスイング
Cubaseで作成したMIDIノートにスウィングを適用し、リズムに独特のグルーヴ感を加えることができます。以下の手順を行います。
- 手順1クオンタイズパネルを開く
上部にある「クオンタイズパネルを開く」ボタンを押します。
または
メニューから「編集」→「クオンタイズパネル」を選択します。
- 手順2クオンタイズプリセットの設定
プロジェクトウィンドウ上部の「クオンタイズプリセット」から、適用したい音価(例: 1/16)を選択します。
- 手順3スウィングの適用
「スウィング」スライダーを調整します。
スウィング値を0%から100%の間で設定できます。
• 0%: 完全なストレート(ジャストなリズム)
• 100%: 完全なスウィング(跳ねたリズム)
一般的には、10%~20%程度のスウィングを適用すると、自然なノリを出すことができます。
- 手順4クオンタイズの適用
スウィング値を設定した後、スウィングを適用したいMIDIノートを選択し、「クオンタイズ」ボタンを押します。
これにより、選択したノートにスウィングが適用され、リズムに人間味や抑揚が加わります。
Cubaseベロシティのランダム化
ベロシティは、MIDIノートの強さを表します。全てのノートが同じベロシティでは機械的に聞こえるため、ベロシティをランダムに変化させましょう。
ベロシティを手動でランダマイズする方法
- 手順1MIDIエディター
MIDIエディターを開きます。
- 手順2調整
ノートごとに鉛筆ツールや選択ツールを使って手動でベロシティを調整します。
ベロシティを自動でランダマイズする方法
- 手順1MIDIノートの選択
ベロシティをランダマイズしたいMIDIノートを選択します。
- 手順2ロジカルエディターを開く
メニューから「MIDI」→「ロジカルエディター」→「設定」を選択します。
- 手順3設定の入力
ロジカルエディター内で以下の設定を行います。
イベントターゲットフィルター: 「タイプ」→「等しい」→「ノート」
イベント変換アクション: 「ベロシティ」→「次の範囲でランダム値を設定」
パラメーター1と2: ベロシティの最小値と最大値を設定します。
- 手順4適用
設定後、「適用」ボタンをクリックしてランダマイズを実行します。
Cubaseピッチのランダマイズ
人間の演奏では、音程が完全に固定されていないことが多く、微妙なピッチの揺らぎがあります。これをCubaseで再現するためには、ピッチベンドやオートメーションを使って少しだけピッチを上下させると、アナログの揺らぎが表現できます。
作成したMIDIノートのピッチを自動でランダマイズする方法
ギターやハイハットなどの特定の楽器では、強く演奏するとピッチが微妙に変化するため、これをロジカルエディターで再現します。
- 手順1MIDIノートの選択
ピッチをランダマイズしたいMIDIノートを選択します。
- 手順2ロジカルエディターの起動
メニューバーから「MIDI」→「ロジカルエディター」→「設定」を選択します。
- 手順3設定
ロジカルエディター内で以下の設定を行います。
イベントターゲットフィルター: 「タイプ」→「等しい」→「ノート」
イベント変換アクション:
- 「実行対象」で「サブタイプ」を選択すると、ピッチになります。
- 「操作」で「次の範囲で相対ランダム値を設定」
- パラメーター1と2:ピッチの変化幅を設定します。例えば、-2から2の範囲でランダマイズしたい場合、パラメーター1に-2、パラメーター2に2を入力します
- 手順4適用
設定が完了したら、「適用」をクリックします。これで、選択したMIDIノートのピッチが指定した範囲内でランダムに変化します。
リアルタイムレコーディングでMIDIノートのピッチをランダマイズする方法
インプットトランスフォーマーを使用します。
インプットトランスフォーマーとは
は、MIDI信号をリアルタイムで変換・フィルタリングする機能です。これにより、特定の条件に基づいてMIDIデータの属性(ベロシティ、ピッチ、音長など)を変更したり、フィルタリングしたりできます。特にライブ演奏やリアルタイムでのMIDI入力時に便利です。演奏を効率化し、リアルタイムでのパフォーマンスを向上させることができ、また手動編集の手間を削減し、スムーズなワークフローを実現できます。ロジカルエディターのGUIに似ています。
- 手順1MIDIトラックを選択
- 手順2インプットトランスフォーマーを開く
- 手順3モジュールの選択
インプットトランスフォーマーのウィンドウで、左上のモジュール「1」チェックボックスをクリックします。
- 手順4条件の設定
イベントターゲットフィルターの右にある挿入ボタンを押すと自動的に条件がでてきます。フィルター対象「タイプ」、条件「等しい」、パラメーター1「ノート」となっているこのデフォルトのままで使用します。
お好みで、さらに挿入ボタンを押してベロシティーを条件に追加すると、強く推した時だけピッチがずれます。
- 手順5アクションの設定
イベント変換アクションで以下のように設定します
- 「実行対象」で「サブタイプ」を選択すると、ピッチになります。
- 「操作」で「次の範囲で相対ランダム値を設定」
- 「パラメーター1」と「パラメーター2」に、ピッチの変化幅を設定します。例えば、-2から2の範囲でランダマイズしたい場合、パラメーター1に-2、パラメーター2に2を入力します。
- 手順6機能の設定
機能のドロップダウンメニューから「変換」を選択します。
- 手順7適用
設定が完了したら、インプットトランスフォーマーウィンドウを閉じます。この設定はリアルタイムで適用され、演奏中のMIDIノートのタイミングがランダムに揺らぎを持つようになります。
Cubaseエクスプレッションマップによるアーティキュレーション
エクスプレッションマップとは
エクスプレッションマップとは、音楽制作ソフトウェアであるCubase Proで使用される機能です。これは、異なる音色や演奏技法を管理し、自動的に切り替えるためのツールです。
弦楽器やホーンなどの楽器で、音符だけでは表せない奏法『アーティキュレーション』を細かく設定することで、よりリアルなニュアンスが生まれます。複数の表現を一つのトラックで自在に切り替えられるため、オーケストラのような複雑なアレンジにも便利です。なおここではキースイッチ付きの音源が必要です。
エクスプレッションマップの設定方法
Cubaseバンドル音源HALionSonic の場合
- 手順1エクスプレッションマップの作成準備
CubaseバンドルのHALionSonicでキースイッチ付きの音源を選択します。
「Inspector」→「エクスプレッションマップ」→「▼」→「キースイッチを読み込み」をクリック。
- 手順2アーティキュレーションの追加
このような「エクスプレッションマップ設定」画面がでてきます。右下のアーティキュレーションをご確認ください。
- 手順3エクスプレッションマップの適用
ピアノロールの左下のほう「コントローラーレーンを作成」→「アーティキュレーションダイナミクス」を選択。
「エクスプレッション設定」に登録されていたアーティキュレーションがピアノロールに反映されました。
コントローラーレーンに鉛筆ツールで特定の演奏表現を割り当て、楽曲のニュアンスを細かく調整します。
Kontaktなどの追加音源 の場合
- 手順1エクスプレッションマップの作成準備
Kontaktなどの追加音源を起動さます。事例はKontaktで動くフリー音源のshreddage3.5Stratus FREEです。
「Inspector」→「エクスプレッションマップ」→「▼」→「エクスプレッションマップ設定」をクリック。
- 手順2マップの設定
エクスプレッションマップのウインドウが起動します。左上にある「+」でマップを追加し、任意にわかりやすいマップ名をインプットします。
- 手順3サウンドスロットの追加
サウンドスロットの「+」を押して必要なアーティキュレーションの数だけ追加します。
音源のキースイッチにカーソルを当てるなどして、アーティキュレーションを確認します。サウンドスロットの「リモート」にC0のような音名を入力します。
名前にアーティキュレーション名を入力します。
アーティ1にカーソルを移動して右クリック→「アーティキュレーションを追加」を選択します。デフォルトの「奏法」「長さ」「装飾音」「強弱記号」からも選択できます。
- 手順4アーティキュレーションの追加
ウインドウ右下の「アーティキュレーション」に追加されます。
アーティにカーソルを移動して、右クリック→「テキスト」を選択します。
「アーティ」にSUSTAINなどを入力してください。サウンドスロットのアーティ1に反映されます。また、アーティキュレーションの内容にも自動でテキストが入ります。
- 手順5出力マッピングの設定
ウインドウ右上の「出力マッピング」の「+」を押します。
「データ1」にリモートで設定した音名を入力します。
必要に応じて手順3~6を繰り返します。
- 手順6設定の保存
ウインドウ左下の「保存」のボタンを押してください。
- 手順7エクスプレッションマップの適用
Inspectorに戻り、設定した「Shreddage Stratus Free」を選択します。
ピアノロールの左下のほう「コントローラーレーンを作成」→「アーティキュレーションダイナミクス」を選択。
「エクスプレッション設定」に登録されていたアーティキュレーションがピアノロールに反映されました。
コントローラーレーンに鉛筆ツールで特定の演奏表現を割り当て、楽曲のニュアンスを細かく調整します。
または、ノートを選択し、ピアノロール上のアーティキュレーションをクリックして選択します。
Cubaseのレガート(スラー)やグリッサンド
鍵盤楽器やギターなどでは、レガート(スラー、滑らかな音のつなぎ)やグリッサンド(音を滑らせる)の技法がリアルさを増します。
MIDIエディターで音の接続部分を調整し、ノートの間に短い休符やオーバーラップを作ることで、レガート効果を出すことができます。
- 手順1ノートの選択
レガートを適用したいMIDIノートをすべて選択します。
- 手順2レガートの適用
メニューから「MIDI」→「機能」→「レガート」を選択します。
これにより、選択した各ノートの終了位置が次のノートの開始位置に達するように引き伸ばされ、滑らかなつながりが実現します。
- 手順3オーバーラップ量の調整
ノート間のオーバーラップや間隔を調整するには、「環境設定」→「編集操作」→「MIDI」内の「レガート時のオーバーラップ量」で希望するティック数を設定します。正の値でオーバーラップ、負の値で間隔を指定できます。4分音符は480ティックに相当します。レガートのオーバーラップ量は、音楽のジャンルや演奏スタイルによって適切な設定が異なります。実際の演奏やサウンドを確認しながら、最適なオーバーラップ量を見つけてください。
- 手順4選択ノート間のみのレガート適用
「レガートモード:選択したノート間のみ」をオンにすると、選択したノート間でのみレガートが適用され、特定のフレーズやパートに限定して効果を与えることが可能です。
MIDIエディターでグリッサンド効果を適用するには、ピッチベンドを活用する方法が一般的です。以下の手順で設定できます。
- 手順1ピッチベンドの範囲設定
使用するソフト音源のピッチベンド範囲を調整します。多くの音源ではデフォルトで±2半音に設定されていますが、グリッサンドをより広範囲で表現するために、±12半音(1オクターブ)などに拡大します。具体的な設定方法は音源によりますが、例えばHalionSonicのピアノ音源では中央あたりにある「PB」というメーターで設定できます。
- 手順2MIDIエディターでピッチベンドを入力
CubaseのMIDIエディター(キーエディター)を開き、
下部のコントローラーエリアで「ピッチベンド」を選択します。
グリッサンドを適用したい音符の開始点から終了点まで、ピッチベンドのカーブを描きます。カーブの形状は「ライン」や「放物線」などから選択でき、希望する効果に合わせて調整します。
- 手順3ピッチベンドの数値入力
ピッチベンドの値を正確に設定するために、カーブの各ポイントをクリックし、左上の数値入力欄に直接値を入力します。特に、ピッチを元の位置に戻す際には、終了点の値を0に設定することで、正確なピッチに戻すことができます。
Cubase音量のオートメーション
人間の演奏では、常に同じ音量で演奏されるわけではなく、フレーズに合わせて微妙に音量が変化します。Cubaseのオートメーション機能でボリュームを調整し、演奏の流れに合わせて強弱をつけると自然になります。
- 手順1オートメーションレーンの表示
調整したいトラックの左下にある「∨」マークをクリックして、オートメーションレーンを展開します。
- 手順2オートメーションの書き込み
トラックヘッダーにある「W」(書き込み)ボタンをオンにします。
再生しながら、ミキサーのフェーダーやプラグインのパラメーターを操作します。
その動きがオートメーションとして記録されます。
- 手順3オートメーションの編集
書き込まれたオートメーショングラフは、鉛筆ツールや選択ツールを使って直接編集できます。
微細な調整が必要な場合は、ズームインして詳細に編集すると効果的です。
- 手順4オートメーションの読み込み
「R」(読み込み)ボタンをオンにすると、再生時にオートメーションが反映されます。
リアルなサンプルや音源
高品質なサンプル音源やモデリング音源を使うと、よりリアルな音が得られます。例えば、ピアノの演奏では、鍵盤の打鍵音やペダルノイズなどのディテールが加わることで、リアルな質感が増します。
まとめ
Cubaseで人間らしい演奏を再現するためには、タイミング、ベロシティ、表現(エクスプレッション)、ピッチの揺らぎなどを細かく調整することがポイントです。これらのテクニックを組み合わせることで、自然でリアルな演奏表現を実現できます。
Cubase Pro やCubase Artistではこれらヒューマナイズを自動で実現可能な機能が備わっています。手動でもやれないことはないですが、これらの機能を使うと作業の省力化、時短になります。Cubase ElementsやCubase AIやCubase LE のかたはアップグレードをお勧めします。
コメント